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高松(イサム・ノグチ庭園美術館)

今回の旅、本来は数日間直島に滞在して一つ一つの作品とゆっくり向き合いながらぼーっとのんびり過ごすつもりだったのですが。

 

飛行機をとってから、直島、高松共に主要な美術館が休館中だということが発覚したのです。

 

これは大変ショックでした。

春に行われる瀬戸内美術祭に向けてどこも作品メンテナンス中で、

私が旅から帰った翌日に再開するというタイミングの悪さです。

 

見られるものもたくさんあるのですが、さすがに島だけでは間が持たないと急遽見つけたのがイサム・ノグチ庭園美術館です。

 

これが10日前までに往復ハガキで予約を取らねばならず、

週に数日、一日3回だけ、1時間しか入館のチャンスがないというなかなか

強気でレアな美術館で、しかも入館料は2160円。

期待も大きくなります。

 

13時からの予約に遅れまいと栗林公園を慌てて飛び出し、

美術館へ電車を乗り継ぎます。

琴平電鉄の栗林公園駅。

かわいい駅です。電車も上越と同じ短い編成で、手動ドアに親しみを感じます。

最寄り駅から美術館まで徒歩20分の道のり、その間にお遍路さんとおぼしき人とすれ違い

ました。お遍路知識がほぼ皆無ですが、こういう所に立ち寄られるのでしょうかね。

 

この牟礼町は源平の屋島の戦いが行われた土地らしく、道の所々に

「与一の弓がどうのこうの」とか書いてありました。

(興味関心がなさ過ぎてお恥ずかしい。)

 

この町、石がよく取れるらしく、道々にたくさんの石屋さんがあります。

 

石ひとつひとつに番号が書いてあります。

そうこうしてようやく到着したイサム・ノグチ庭園美術館です。

 

なんと、ここも石だらけです。

 

もともとはノグチがアトリエを構えていた場所です。

奥に見える石の塀はぐるっと円形になっていて、その中で作品制作をしていたそうです。

今は作品の置かれた庭園と、倉が残っています。

 

そこを予約した10名前後の見学者とガイド1名で自由に見て回ります。

(写真撮影NGのため、以下文章のみとなります。)

 

 

見学者のほとんどはノグチのことが多かれ少なかれ好きな人と見えて、

作品を見る度にため息をもらしたり、感嘆の声をあげていました。

 

一方私のイサム・ノグチに関する知識は、

「大学生のとき美術の講義で名前聞いたことあるな〜」程度。

 

隣の人が「すごい・・・」と呟くたびに

「へー。」とだけ思っていました。(温度差よ。)

 

作品は石に少しちょちょっと彫り跡をつけたくらいのものも多く

一見どう見ていいか困惑するというか、予備知識のない私にはなんとも寡黙な作品に見えます。

 

ただその余分なもののなさ加減に「禅」を感じさせられたり、

同じモチーフの反復に関連を見出したり、

先入観なくあれこれ勝手に勘ぐるのはまた楽しいものです。

 

 

ノグチが制作中に滞在していた家も見学することができました。

とはいえ、中に入ることはできないので

窓枠にはめられた柵の隙間から皆で代わる代わる中を覗くのですが・・・

これが集団でノゾキをしているような、ちょっとシュールな光景でした。

 

 

自分に引き付けて思ったことは、

やっぱり作品はたくさん作らないと、試さないとうまくならないよなーということ、

それから、偉くなると(すごい人になると)自分の好みの場所とか空間とか物を好きに作ったり増やすことができるんだなーということ。

 

あとは「エナジー・ヴォイド」という作品に出会えたことが良かったです。

大きな黒い石の門というか、不思議な形をした枠というか、中が空洞になっています。

シンプルな作品なのですが、異様なオーラ、威圧感、なんだかこちらが試されているような挑発的な作品で大変に印象に残りました。

後から調べたら有名な作品のようです。

これに出会えただけでも来た価値があったと思います。